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製造業におけるDMCとRFIDの比較

Posted by Balluff on Jul 23, 2020 5:43:28 PM

製品の完璧なトレーサビリティや確実な識別の議論が高まることによって、製造業へ識別システムを採用することは避けて通れないものとなりました。これには主に2つの固有な技術があります。DMC(Data Matrix Code:データマトリックス識別)とRFID(Radio Frequency Identification:無線自動認識)です。

RFIDは、まだ市場では実用性と価格に対する性能のバランスが未熟だと評価されています。この点についてDMCと比較すると、やはり実用性と費用対効果についてはDMCに軍配が上がります。あなたのアプリケーションにDMCとRFIDのどちらを選択するかは、2つの技術の基本的な違いを理解する必要があります。両者にはそれぞれ長所と短所があり、誤った判断をすると無駄なコストをかけてしまうおそれがあります。選択する技術は、識別するターゲットに依存します。サイズや形状、環境条件を基に決めることができます。

 

DMCの新たな可能性

DMCは、様々な2次元のデータポイントのパターンで、マトリクス方式の正方形で表されます。マトリクスは10 x 10 ~ 144 x 144の記号で構成されています。0と1で判別されるバイナリコードで、最大1,556バイトまでのデータを保持できます。


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水平方向と垂直方向の境界線が交わりには、読取りに必要な向きを示すコーナーが表記されます。これを「ファインダパターン (Finding Pattern)」と呼びます。その他の面は、マトリクス構造と位置とサイズを示すため、境界線は白と黒を交互に配置しなければなりません。これを、「タイミングパターン (Alternating Pattern)」と呼びます。データを格納する領域はこれらのパターンの内側に表記されます。

 

DMCの利点

装置が読めるこのコード形態は、バーコードより小さな領域でより多くのデータを格納できるよう開発されたものです。カメラ型のスキャナは、たった2mm x 2mmのドットパターンでも確実に読むことができます。そのため、DMCは表示できる領域が非常に狭い曲面上や非常に小さな製品に最適です。つまり、DMCの技術を用いれば、非常に小さな領域に豊富な情報を置くことができます。製造番号やバッチナンバー、製造日や有効期限、その他の製造に関する重要なデータは、すべての製造工程に渡ってワークへ永久に紐付けできます。最も大きな利点は、特殊な印刷方法やエンボス加工を用いれば、ラベルを貼り付けずに、直接部品へコードを刻印できることです。これは、打刻やレーザー刻印、インクジェットや熱転写プリントで可能です。プラスチックや紙、金属など様々な材質に対応できます。また、バーコードスキャナではなく、DMC読取り用の特殊なカメラを用いるので、0 ~ 360°のあらゆる向きでコードを読むことができます。さらに情報の冗長化とエラー修正アルゴリズムにより、DMCの読取りエラー修正が秀逸です。データ領域の25 ~ 30%が汚れや損傷にあっても補完できます。

 

DMCの欠点

リニアバーコードスキャナではDMCの読取りが不可能なため、カメラを用いた高額な画像処理システムを導入しなければなりません。さらに、保存されたデータはコード全体で表現されるため、コードの一部だけではなく、全体が見えるようにしなければなりません。そうでなければ、完全なデータを取得することができません。

DMCは20%以上のコントラストであればコードの読取りが可能ですが、カメラで使用するライトの反射や拡散が起こりやすい光沢のある表面の取り扱いは困難です。また、カメラを取り付ける角度も重要です。

最後に、DMCの位置や貼付方法でも読取りの可否が決まります。RFIDとは異なり、DMCはカメラが視認できたときのみ読取りが可能です。DMCがカメラから隠れていると、読取りできません。例え視認できたとしても、定められた読取り距離に入っていなければDMCを読取ることはできません。

 

RFIDで製造プロセスの可視化を加速

この技術はRFIDタグを備えたモノであれば、非接触で確実に識別することができます。産業用のRFIDシステムは複数のRFIDタグ(データキャリア、トランスポンダ)と、1つ以上のアンテナ(リード/ライトヘッド)によって構成されます。

RFIDアンテナは内部のコイルで微弱な電磁界を発生させます。RFIDタグがアンテナの電磁界の領域に入ると、タグに内蔵されているコイルで電力を発生させ、新しい情報を内部メモリに書き込んだり、RFIDアンテナへデータを送信したりします。RFIDタグがアンテナの電磁界の領域から出ると電力供給が停止し、RFIDアンテナとの接続が切れます。データはタグのメモリに保存されます。

RFIDタグは簡単に貼り付けられるものから、円盤状やボルト、ガラスタグなどの堅牢なものまで様々なタイプが用意されています。わずか数ミリサイズのタグは工作機械の工具の識別に用いられ、大きなサイズのタグはコンテナの識別に使用されています。

 

 

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RFIDの利点

RFIDタグには、主に3つの利点があります:

  • 視認できなくても非接触で読取り/書き込みが可能
  • RFIDタグの書込み回数はほぼ無制限
  • 複数タグの同時読込み可能 (マルチタグ / 一括読取り)

 

これらの特徴はDMCでは提供できない、全く新しい可能性を提供します。RFIDタグがパレットや工具の見えないところへ搭載されても、識別は可能です。RFIDタグは視認が不要なので、ものすごく汚れていても読取りは可能です。

一度、RFIDシステムを生産プロセスに導入すれば、作業者の介入を最小限にして運用することができます。新たな要望が来ても、新しい情報を自動的にタグへ書き込むだけです。1つのタグに最大128kバイトのデータを保存できます。RFIDタグを搭載したパーツの検出は1秒以下で、バーコードより高速です。これにより、管理上のミスが減り、透明性とタクトが著しく向上します。

RFIDにより、後処理が終わっても寿命までパーツを追跡することができます。また、すべての製造手順をドキュメント化でき、パーツに搭載されたRFIDタグから直接読取り/書込みができます。セキュリティ上の問題をさけるため、データの暗号化やパスワードによる保護、データを永久に削除する「Kill」機能の設定が可能です。

RFIDの欠点

RFIDにもいくつかの欠点があります。RFIDの周波数帯によっては、物理的な条件が問題の原因となる場合があります。例えば、金属のコンテナや金属の構造物により、反射や遮蔽により読取りができなかったり問題が起こったりします。また、水分量の多い製品の場合、無線を吸収し、特定のRFIDタグが検出できなくなることがあります。

もう一つの難点はコストです。通常、大量のアンテナの導入やRFIDタグへのコストがかかるため、RFIDシステムはDMCより高価になります。しかし、読取り/書込みが無制限になるので、少なくともタグを使い回すクローズなアプリケーションであれば、数万個のタグを要する高い初期コストも時間とともに償却できます。

 

アプリケーションに応じた周波数帯の種類

RFIDには、それぞれの特徴を持った3つの周波数帯があります:

 

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アプリケーションによって、選択する周波数が決められます。低周波帯 (LF)のシステムは金属からの影響が少ないため、工具の識別のような金属内にRFIDタグを埋め込まなければならないアプリケーションに対応できるよう、設計されています。高周波帯 (HF)のシステムは大容量のデータを高速で通信できるため、仕掛品のアプリケーションに最適です。プラントやプロセス内でアンテナとタグの距離を近づけることができない場合、長距離通信を誇る超高周波帯 (UHF)のシステムは非常に魅力的です。様々な場所にある複数のRFIDタグをたった1つのアンテナで読取ることができます。アンテナの読取り範囲にあるRFIDタグのデータをほぼ同時に読取ることができるため、UHFはすべてのパレットの積載物を検出するアプリケーションに最適です。

 

DMCとRFIDタグの主な違い

DMCとRFIDの最も重要とされる違いを説明します:

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どちらがあなたのアプリケーションに最適?

最終的にどちらの技術を採用するかは、常にケースバイケースの判断になります。ここでは、正しい選択をするための基本的な質問をいくつかご紹介します:

  • プロセスの最後でコードを再利用しますか?それとも、破棄しますか? → 再利用する=RFID / 再利用しない=DMC
  • プロセス内でデータの変更はありますか?それとも途中でデータの内容の書込み / 変更を行いますか? → 最初の1回のみ=DMC / 変更あり=RFID
  • 検出距離はどれくらいですか? → 短距離=DMC / 長距離 = RFID
  • 対象物のデータ量はどれくらいですか? → 少ない=DMC / 多い=RFID
  • 対象物にプロセスデータを紐付けますか? → はい=RFID / いいえ=DMC
  • どれくらいの処理速度が必要ですか? → 気にしない= DMC / 高速処理が必要=RFID
  • 現場の光やコントラストの条件はどうですか? → 良い= RFID / 悪い= DMC
  • マーキングに使用できるスペース? → 狭い = DMC / 広い = RFID
  • 対象物の視認は困難ですか? → はい = RFID / いいえ = DMC
  • 汚れや損傷を引き起こす要因がありますか? → ない = DMC / ある = RFID
  • 周辺に金属や液体がありますか? → ある = DMC / ない = RFID

 

必ずしも「二者択一」ではありません

DMCとRFIDは必ずしも競合する技術ではありません。両方の技術を組み合わせた方が有益な場合もあります。組み合わせたソリューションとして、RFIDラベル上に印刷されたDMCがあります。対象物上のDMCをスキャナで読取りながら、それ以上のタスクをRFIDタグで実行します。この特殊な技術により、包装されていても商品を識別することができます。さらに、関連する全てのプロセスデータをRFIDタグに保存することで、バリューチェーン全体へ付加価値を提供することができます。

 

さらなるRFID技術の情報はwww.balluff.jpをご覧ください。

トピック: rfid, トレーサビリティ