自動車販売店と自動車製造工場の違いを想像してください。製品を販売する小売店の環境は、製品が生産される産業環境とは大きく異なります。しかし、リテール用に開発された汎用RFID機器は、製造業の顧客向けにも販売されています。これらの製品は、倉庫などでは問題なく動作するかもしれませんが、多くの場合、産業用としての認証を受けているわけではありません。
汎用RFIDと産業用RFIDの違いは？
産業環境では多くの場合、専用の産業用機器でなければ満たすことができない高い堅牢性と性能、接続性が求められます。例えば、汎用のRFID機器は、物理的にPCやサーバーと接続するためのEthernetポートを備えていますが、産業用のPLCやその他の産業用オートメーション制御機器と接続するためのEthernet/IPやPROFINETE、その他の産業用プロトコルには対応していません。多くの汎用のRFIDアンテナは、外部機器でプロトコル変換をする必要があり、システム全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。さらに、汎用のRFID機器を産業環境で使用すると立ち上げにかかる時間、工数、コストが増大する可能性があります。
RFID機器を選定する際には、その環境での使用が可能であるものと、その環境での使用が最適でより信頼性の高いものとを区別する必要があります。過酷な環境である産業環境で信頼性高く動作するかを見極める3 つのポイントを考慮してください:
- RFIDシステムは産業用制御システムへシームレスに統合できるか？
- 生産プロセスと連携した情報システムに求められる高い信頼性とスピードを提供できるか？
- 生産ラインでの稼働時間や性能を長期的に維持できるか？
多くの場合、RFIDは「ソリューション」として捉えられていますが、実際には、MES、ERP、e-カンバン、ロボティクス、資産管理、マテハン、品質管理など、製造現場で稼働しているシステムへデータや見える化を提供する補助的な技術として利用されています。これらのシステムで必要とされる信頼性とスピードでデータを提供できなければ、RFIDを使用する意味がなくなります。
産業環境やサプライチェーンの環境の物理的条件によって、RFIDのパフォーマンスが異なる場合があります。小売店のような環境のRFIDユーザーにとってはタグ数量が重要となりますが、製造現場ではより強力であちこちにある干渉源である金属に対する耐性の方が課題となります。
RFID製品が運用する環境に適しているか判断する際には、製品のメリットが誇張された広告や誤解を招くような仕様に騙されないように注意深く比較することが大切です。製品の設計と構造を考慮し、作業プロセスによってどのように影響を受けるかを考慮してください。実際の作業環境には、影響を及ぼす要素が見落とされている可能性があり、他の場所では再現が不可能なため、可能な限りラボやデモエリアではなく、実際に使用される場所で製品をテストする必要があります。
産業用 RFID 機器とサプライチェーン向けのRFID機器の主な違いは次の通りです:
- 標準で産業用ネットワークと接続が可能
- タグ読み取りの信頼性が高く、生産システムを遅らせることのない速度で継続的に動作することが可能
- P65以上のコネクタと耐衝撃性、耐振動性、耐熱性などの認証を取得した耐久性の高い筐体
- センサ、PLC、IO-Link、その他の産業用FA機器など、複数のRFID機器や対応機器に接続できること。
これらの基準のいずれかを妥協すると、導入へ時間を要したり、サポートや交換コストが発生したり、システム障害のリスクが増大したりするおそれがあります。
